大雨に強い家はどうつくる?名古屋の浸水被害から考える、土地・設計・暮らしの備え

こんにちは。
皆様の家づくりを素敵な思い出に導く、家づくりコーディネーターの纐纈 泰章です。

今年は、大雨による被害について考えさせられる機会が続いています。

9月には名古屋でも記録的な大雨となり、道路の冠水や住宅への浸水被害が発生しました。

その後も千葉県では台風による大きな被害が発生し、災害救助法が適用されるなど、各地で自然災害への対応が続いています。

台風や大雨のニュースを見るたびに、これから家を建てる方の中には、「大雨に強い家にするには、どうすればいいのだろう?」と考える方もいるのではないでしょうか。

もちろん、自然災害を完全に防ぐことはできません。

想定を超える雨が降ることもありますし、これまで浸水しなかった場所だから、これからも絶対に大丈夫とは言い切れません。

一方で、今回の名古屋の大雨を見ていて、私自身あらためて感じたこともあります。

激しく冠水していた道路でも、その後、水が引いていく場所がありました。

もちろん場所によって状況は異なりますし、実際に多くの住宅で浸水被害が発生しています。

それでも、その背景を調べてみると、名古屋では過去の水害を教訓として、雨水を排水する施設や河川など、長い時間をかけてさまざまな浸水対策が進められてきたことが分かります。

「想定以上のことは起こる。それでも、被害を少なくするためにできることはある。」

これは、街づくりだけではなく、私たちの家づくりにも同じことが言えるのではないでしょうか。

今回は、名古屋で起きた大雨と、その後も各地で続く災害をきっかけに、これから家を建てる方と一緒に「大雨に強い家」について考えてみたいと思います。

大雨が過ぎた後、雨に濡れた道路と住宅街に光が差す様子


大雨に強い家とは「絶対に浸水しない家」なのか

まず、今回の記事でお伝えしたいことがあります。

大雨に強い家とは、どんな雨が降っても絶対に被害を受けない家ではないと私たちは考えています。

9月8日の大雨では、名古屋市で1時間最大104.5mmという記録的な雨が観測されました。

これは、2000年の東海豪雨時に観測された1時間97mmを上回る雨です。

名古屋市では9月16日時点の速報値で、床上浸水279棟、床下浸水179棟の住家被害が確認されています。

どれだけ備えていても、その想定を上回る自然現象が起きる可能性はあります。

だからといって、「何をしても同じ」ということでもありません。

今回の名古屋の大雨は、そのことを考える一つの事例になりました。


東海豪雨から26年。名古屋の街は水害への備えを重ねてきた

名古屋で暮らしている方の中には、2000年9月の「東海豪雨」を覚えている方も多いのではないでしょうか。

名古屋市や愛知県では、東海豪雨など過去の大きな水害を受けて、さまざまな治水・浸水対策が進められてきました。

名古屋市上下水道局では、著しい浸水被害が発生した地域などを対象に、雨水ポンプの増強、雨水貯留施設、管きょの整備などを進めています。

現在進められている緊急雨水整備事業が完成すると、東海豪雨以前と比較して、ポンプの排水能力は約1.3倍、雨水貯留施設の貯留量は約6.3倍になる計画です。

また、国や愛知県でも、庄内川、新川、天白川などで河道掘削や堤防、放水路、排水機場、遊水地などの整備が進められてきました。

そして今回、東海豪雨時を上回る1時間最大104.5mmという雨が降ったにもかかわらず、愛知県は、東海豪雨時と比較して浸水家屋数が大きく減少するなど、これまでの河川整備が大きな効果を発揮したとしています。

もちろん、今回も多くの方が被災しています。

ですから、「名古屋なら大雨が降っても大丈夫」という話ではありません。

私がここで注目したいのは、過去の災害から学び、対策を積み重ねてきたことが、次の災害で被害を小さくすることにつながっているという点です。


「想定以上は起きる」ことを前提に備える

この考え方は、家づくりにも置き換えられるのではないでしょうか。

私たちは家づくりをするとき、つい「安全か、危険か」という二択で考えてしまいます。

例えば土地探しなら、

「ハザードマップに色が付いているから危険」

「色が付いていないから安心」

と考えてしまうこともあるかもしれません。

しかし、自然災害について「絶対」を見つけることは難しいものです。

それよりも、

  • どのようなリスクが想定されているのか
  • 街ではどのような対策が行われているのか
  • 土地にはどのような特徴があるのか
  • 建物側でできることはあるのか
  • 万一被害を受けたとき、どう暮らしを立て直すのか

と、いくつもの備えを重ねて考えていくことが大切なのだと思います。


土地を選ぶとき、「街がどう備えているか」も見てみる

これから土地を探す方にとって、今回ぜひ一つ覚えておいていただきたい視点があります。

それは、土地そのものだけでなく、その街が水害に対してどのような備えをしているのかを見ることです。

土地の水害リスクを調べるとき、ハザードマップを確認することは大切です。

さらに少し視野を広げてみると、河川の整備、雨水を一時的にためる施設、排水設備など、私たちの暮らしを守るためのさまざまな仕組みがあります。

普段生活しているだけでは、なかなか意識することはありません。

しかし今回の名古屋のような大雨を経験すると、家はその敷地だけで成り立っているのではなく、街のインフラの中で暮らしているということにも気づかされます。

土地を見るときに、駅からの距離や学区、買い物の便利さ、価格を見る。

そこにもう一つ、

「この街は、災害に対してどんな備えをしているのだろう?」

という視点を持ってみてもよいのではないでしょうか。


次に考えるのが「その土地に、どう建てるか」

街全体で対策が行われていても、一つひとつの土地の条件は異なります。

道路との高低差、周囲の土地との関係、水の流れ、近くの河川や水路などによって、同じ地域でも考えるべきことは変わります。

そして土地の特徴が分かれば、建物側で検討できることもあります。

例えば、敷地と建物の高さの関係、建物の配置、設備機器を設置する位置、外構や雨水排水の計画などです。

ただし、ここでも「これをすれば大雨に強い家になる」という一つの正解があるわけではありません。

土地の条件を知ったうえで、その土地に合った設計を考える。

これが大切です。

防災だけに限った話ではありません。

土地に高低差があれば、それを単に「デメリット」と考えるのではなく、高さの違いを住まいの設計に活かせる場合もあります。

日当たり、周囲の建物、道路との関係なども同じです。

土地には、それぞれ条件があります。

その条件を読み取って住まいを考えることが、設計の役割の一つだと私たちは考えています。

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もし被害を受けたら。「その後」までが暮らしです

もう一つ、今回の各地の被害を見ていて忘れてはいけないと感じるのが、災害が起きた「その後」です。

家が被害を受ければ、そこで終わりではありません。

被害状況を確認し、片付けをして、必要な手続きを行い、修理をして、少しずつ日常生活を取り戻していくことになります。

今回の大雨でも、名古屋市では罹災証明書の申請や建物被害認定調査が行われています。

千葉県でも、台風第25号による被災住宅に対する応急修理制度など、被災した方が生活を取り戻すための支援が始まっています。

災害への備えというと、非常食や避難用品を思い浮かべることが多いかもしれません。

もちろん、それも大切です。

それと同時に、家づくりをするときには、火災保険の水災補償なども含め、「もし被害を受けたとき、どうやって暮らしを立て直すのか」という視点も持っておきたいところです。

家を守ることだけではなく、その家で続いていく暮らしを守る。

そこまで考えて、初めて「備える」ということなのかもしれません。


KOKETSU A.D.が考える「大雨に強い家」

私たちは、家づくりを建物だけで考えません。

どこで暮らすのか。 その土地にはどんな特徴があるのか。 どんな建物を計画するのか。 そこにどのような予算を使うのか。 そして、その家でどんな暮らしを続けていきたいのか。

それぞれを別々に考えるのではなく、一つにつなげながら、そのご家族にとっての答えを整理していくことを大切にしています。

防災も、その一つです。

すべてのリスクをゼロにすることはできません。

だからこそ、「絶対に大丈夫な家」を求めるのではなく、自分たちが暮らす場所のことを知り、考えられる備えを一つずつ重ねていく。

今回の名古屋の大雨と、これまで街が積み重ねてきた対策を見て、私は改めてその大切さを感じました。


想定以上は起きる。それでも、できることはある

9月8日の名古屋では、東海豪雨時を上回るほどの激しい雨が降りました。

その後も各地で災害が起きています。

これから先も、「想定以上」の自然災害が起こる可能性はあります。

それを完全に防ぐことはできません。

しかし今回の名古屋では、過去の災害をきっかけに積み重ねてきた対策が、被害の軽減につながったことも確認されています。

想定以上は起きる。

それでも、起きたときの被害を少なくするために、今できることはある。

街も、土地も、建物も、そして暮らしも。

一つだけで「大雨に強くする」のではなく、いくつもの備えを重ねていく。

これから家づくりを考える皆様にとって、今回の大雨が不安だけで終わるのではなく、「自分たちの家づくりでは、どんなことを確認しておこう?」と考えるきっかけになればと思います。


大雨に強い家づくりについてよくある質問

Q. 大雨に強い家にするには、建物だけ対策すればよいですか?

建物だけではなく、土地や周辺環境、地域の治水・排水対策まで含めて考えることが大切です。同じような建物でも、道路との高低差や周囲の地形、水が流れる方向などによって条件は変わります。

「どんな建物を建てるか」だけではなく、「どんな街の、どんな土地に建てるか」から考えることが、大雨への備えにつながります。

Q. 治水対策が進んでいる地域なら、水害の心配はしなくても大丈夫ですか?

治水・排水対策が進んでいても、水害の可能性がなくなるわけではありません。

今回の名古屋でも、過去の災害を受けてさまざまな対策が進められてきましたが、記録的な大雨によって住宅への浸水被害が発生しました。

地域の対策は「絶対に浸水しない」という保証ではなく、被害をできるだけ小さくするために重ねられている備えの一つとして捉えることが大切です。

Q. 家づくりを始めるとき、水害について最初に何を確認すればよいですか?

まずは、検討している地域や土地にどのような水害リスクが想定されているのかを確認してみましょう。

ハザードマップだけで判断するのではなく、土地の高低差や周辺環境、地域で行われている治水・浸水対策などを知ることで、家づくりで考えるべきことが見えてきます。

具体的な土地の確認ポイントについては、関連記事「大雨に強い家は「建物」だけでは決まらない|家づくりを始める前に確認したい土地と暮らしの防災」でも詳しく紹介しています。


土地の条件を、設計に活かした住まいを見る

土地に条件があることは、必ずしもマイナスとは限りません。

こちらのWORKSでは、高低差のある敷地の特徴を読み取り、その高さの変化をスキップフロアとして住まいの中に取り込んでいます。

防災を目的とした住宅ではありませんが、「土地の条件を知り、それを設計につなげる」という家づくりの一例としてご覧いただければと思います。

→ 高低差を活かした、スキップフロアの住まい。